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1on1ミーティングのリスクについて

2019.08.19

1on1のポイントcolumn

こんにちは、白潟敏朗です。

「1on1ミーティング」のリスクについて解説します。

1on1ミーティングの5つのリスク

上司と部下による1対1の面談である1on1ミーティングは、部下とのコミュニケーション改善や上司と部下の相互理解が深まる、部下が成長する等多くのメリット(詳細は、こちら)があります。その一方、多くの失敗事例からも明らかなように。1on1ミーティングにはいくつかのリスクもあります。ここでは代表的な5つのリスクを紹介します。

① 部下が上司を信頼していないと、効果がでないだけでなく逆効果になる

② 上司が部下の話を最後まで聴かないと、1on1ミーティングは失敗する

③ 目標の達成状況や仕事の進捗をテーマに上司が詰めすぎると、部下のモチベーションがさがる

④ 従業員エンゲージメントが低い部下だと、上司にストレスがたまる

⑤ マンネリ化するリスクがある

まずは、リスク①から解説していきます。

1on1ミーティングが部下へのリンチになり失敗!

当たり前のことですが、部下が上司を信頼していないと1on1ミーティングは部下にとって最悪の儀式になります。

部下から信頼されていない上司が1on1ミーティングをやると『なんでもいいから話してごらん』の質問に、『特に話すことはありません』の部下の回答で1on1ミーティングは終わります。

部下は次の1on1ミーティングが開催されるのが億劫になるし、モチベーションが下がります。

次の1on1ミーティングも『特に話すことはありません』になりますが、その後上司から『また話すことないの?、お前のために貴重な時間をとってやってるんだよ!』と叱られ、その後上司の説教が始まる。

このような状況になってくると、部下はメンタルがやられたり退職してしまう可能性もあります。

このようなリスクを回避するためには、部下からの信頼を失っていないかどうかの上司本人の自己評価と部下が上司を評価する部下評価を勧めます。

具体的には以下の20個の項目について評価します。

評価基準は「ついついやってしまう」、「気をつけないとやってしまう」、「絶対やらない」の3段階評価です。

1 部下の悪口、陰口を言ってしまう

2 自分の間違いを部下に認めない

3 部下に嘘をついてしまう

4 特定の部下をえこひいきしてしまう

5 言う事とやる事がちがう

6 部下のせいにする

7 部下の手柄を横取りする

8 トラブル時に逃げてしまう

9 差別的な発言をする

10 部下との秘密を言ってしまう

11 部下との約束を忘れてしまう 

12 若いころの自分と部下を比較し怒ってしまう

13 部下の話を最後まで聴かない

14 恩着せがましい

15 部下の目を見て話さない

16 社会規範、行動指針、社内ルールを守らない

17 上司と部下で態度を変えてしまう

18 部下に愚痴、不平、不満を言ってしまう

19 知らないことを「知らない」と部下に言えない

20 部下に威張ってしまう

部下評価の結果で1から10の項目で「ついついやってしまう」が3個以上の上司には、経営陣や人事部が上司とじっくり面談し、部下から信頼を失っていることを上司に理解してもらいます。

すぐに1on1ミーティングをやらずに、部下との信頼関係を回復する努力や、回復できない場合は上司の異動や降格をします。そうすることで、部下のモチベーション低下や退職リスクをなくしていきます。

上司が話をさえぎり1on1ミーティングぎらいに!

つぎに、リスク②を解説します。

上司が部下の話を最後まで聴くことができない、すなわちアクティブリスニング力(積極的傾聴力)が足りない状況で1on1ミーティングを始めると、部下のモチベーションが下がり1on1ミーティングをやる効果は全くなくなります。

このようなリスクを回避するためには、アクティブリスニング力が不足している上司に1on1ミーティングをやらせないことが極めて重要です。

まずは、前述した信頼関係と同様に、上司のアクティブリスニング力の自己評価と部下評価をお勧めします。具体的には以下に示す10個の項目について評価します。

評価基準は「できていない」、「たまにできている」、「常にできている」の3段階評価です。

1   部下の話を聴く時、部下の目を見、部下の方に体を向けていますか?

2  部下の話を聴く時、うなずいていますか?

3  部下の話を聴く時、相づちを打っていますか?

4  部下の話を聴く時にメモを取っていますか?

5  部下の話をさえぎらずに最後まで理解しようと聴いていますか?

6  部下の話を聴いた後、同じ言葉を繰り返していますか?

7  部下がだまりこんだり、なかなか答えがでない時に沈黙できていますか?

8  部下の話を聴いた直後、間違えた部下の話をすぐ否定しないですか?

9  部下の話を聴いた後、自分の考えを押しつけていないですか?

10  部下が話しやすい雰囲気をつくっていますか?

部下評価の結果で5、8、9の項目で「できていない」が1つでもある上司には、前述した信頼関係の部下評価と同様に、経営陣や人事部が上司とじっくり面談し、アクティブリスニング力が欠落していることを上司に理解してもらいます。

すぐに1on1ミーティングをやらせずに、アクティブリスニング力をつける研修とトレーニングをします。アクティブリスニング力がついてきたことろで1on1ミーティングを実施してもらいます。

そうすることで、部下のモチベーション低下リスクをなくします。

目標未達の部下を詰めすぎて1on1ミーティング拒絶!

つぎに、リスク③を解説します。

1on1ミーティングで目標管理の面談、進捗管理の面談をやっている場合に発生するリスクです。

目標の達成状況や仕事の進捗状況が良い場合はリスクは発生しません。一方それらの状況が悪い場合はリスクが発生する可能性があります。

具体的に説明すると、部下が未達成の原因と解決策を適切に把握している場合、リスクは発生しません。

未達成の原因を考えていない場合は『なんで未達成なのに原因を考えてこないの?』、原因が間違っている場合は『なんでそんな原因しかわからないの?』と叱責をしたくなってしまいます。

そうすると部下は委縮してしまい、1on1ミーティングに参加するのが億劫になります。

このようなリスクを回避するためには、上司の忍耐力と質問力を磨くしかありません。

まずは、忍耐力からです。大きなポイントは、仕事ができない部下の気持ちを理解することです。

一般的には上司になる人は優秀です。仕事ができるから上司になっています。

自分は仕事ができるので、上司は仕事ができない人の気持ちがわかりません。

例えば、自分であれば3日でできる仕事を、部下が1週間以上かけていたら『なんで、そんなに時間かかるの?』とおもわず突っ込んでしまいます。

『私は〇〇マネジャーではないので、3日ではできないのに・・・・・・』と部下は感じ、上司のことを煙たがります。

部下が仕事をできれば上司は必要ないし、上司が部下にならなくてはいけません。

『部下は仕事ができないから、自分の部下になっているんだ』このくらいの気持ちで部下と接しましょう。

そうすると、部下が目標未達の原因を考えていなくても、原因が間違えていても『部下は目線が低いから仕方がないか!』。

以前教えたことを忘れて的外れなことを言っても『部下は教えたことを真剣に聞いてなかったのか?』と思え、あまり腹が立たなくなります。

つぎに、質問力を磨いていきます。覚えてもらいたいセリフは『なんで・・・?』ではなく『どうして・・・?』です。

『なんで達成できなかったの?』よりも『どうして達成できなかったの?』の方がいいです。

『なんで・・・?』と質問すると部下は上司に詰められている・叱られていると感じてしまい、じっくり考える余裕をもてなくなります。

まずは『どうして・・・?』を口癖にしましょう。具体的な会話例を以下に示します。

上司:『どうして目標達成できなかったの?』

部下:『はぁ・・・・・・・』

(しばらく沈黙)

上司:『時間をあげるからゆっくり考えていいよ』

部下:『・・・(考えている)・・・、そうですね・・・・・・・・・・・・!私の努力が足りなかったのでしょうか?』

上司:『努力が足りなかったか!なるほどね・・・・・他には?』

部下:『うーーん、後はなんでしょうか?』

上司:『なんだろうね・・・このフレームワークで考えてみたら?』

 (フレームワークの提示)

部下:『ありがとうございます』

いかがでしたでしょうか?部下と一緒に考えていくイメージです。

『どうして・・・?』の質問に加え、部下に考えてもらうための沈黙、そして部下にヒントを与えるためのフレームワーク(切り口)の紹介でした。

部下が目標未達成や進捗遅れの原因を考えていない場合でも、部下は自分よりも仕事もができないから仕方ないという気持ちで部下と接し、叱らずに耐えます。

そして、『どうして目標達成できなかったの?』の質問で、部下と一緒に考えていくコーチングスタイルで1on1ミーティングを進めていきます。

そうすることで、上司が部下を詰めすぎて部下のモチベーションが下がるリスクを回避できます。

不平・不満を言う部下に上司がやられる!

つぎに、リスク④を解説します。

今までは上司側に起因するリスクを紹介しましたが、ここでは部下に起因するリスクを紹介します。

従業員エンゲージメント(従業員が会社の理念・ビジョン・目標に共感していて、自分も、それを実現したいと思っている状態)が低い部下と上司が1on1ミーティングをやると、会社への不平・不満ばかりを上司が聴くことになってしまいます。

1回から2回であれば上司も耐えられますが、毎回このようなことが続くと上司が疲弊してしまいます。

リスク回避策は、そのような部下とは1on1ミーティングをしないことです。

最初の段階では『どうしたら、そのような課題が解決できるかな?』のような質問をし、一緒に解決策を考えてます。

そこで、前向きに解決していく方向に進めば問題はありません。

しかし、部下が前向きに考えずに不平・不満を言い続けるようであれば、『毎回、このような1on1ミーティングをやっているとお互い不幸になるので、もうやめましょう』と部下に提案し、1on1ミーティングを継続せずやめます。

これで、上司が1on1ミーティングをするたびにストレスを抱えるリスクは無くなると思います。

3ヵ月で1on1ミーティングに飽きてしまう!

最後に、リスク⑤を解説します。

1on1ミーティングを週1回ペースでやっていると3カ月後、月1回ペースでやっていると1年後に1on1ミーティングがマンネリ化するリスクが発生します。

このリスクを回避するためには、1on1ミーティングのステージを3ヵ月後/1年後までに以下の成長ステージに移行する必要があります。

 傾聴ステージ:部下の話をじっくり聴いてあげるステージ

 質問ステージ:質問により部下のおもいや考えを引き出すステージ

 成長ステージ:部下が成長していくステージ

成長ステージに移行するには、部下の成長のPDCAを回す必要があります。

例えば、1カ月後の部下の成長ゴールを設定し、1週間に1回の1on1ミーティングで到達状況をチェックし対策案を共に考え、実行していく。

このPDCAのサイクルを1on1ミーティングをベースに回します。

そうすることで、部下は絶えず自分の成長の課題と向き合い、自分で解決策を実行し効果を上司と共に検証していく流れができ、日々成長していきます。

自分の成長を、1on1ミーティングの都度実感できればマンネリ化を防ぐことができます。

いかがでしたでしょうか?

最近、注目を浴びている1on1ミーティング。

紹介した1on1ミーティングのリスクを踏まえ、事前にリスクを回避し1on1ミーティングを実施して頂ければ幸いです。