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こんな1on1ミーティングは失敗する(その2)

2019.08.22

1on1のポイント

こんにちは、白潟敏朗です。

このような「1on1ミーティング」は失敗する、今回は失敗例④から解説します。

こんな1on1ミーティングは失敗する

最近流行っている上司と部下による1対1の面談である1on1ミーティングは、部下とのコミュニケーション改善や上司と部下の相互理解が深まる、部下が成長し自走する等多くのメリット(詳細は、こちら)があります。しかし、進め方ややり方を間違えるとメリットがでないどころか、社員のモチベーションが下がったり求職者や退職者が増えてしまいます。ここでは、そのような1on1ミーティングの失敗例を紹介します。

失敗① いきなり全社で導入する

失敗② ダメな上司が1on1ミーティングをやる

失敗③ 経営陣が1on1ミーティングをやらない

失敗④ ねらいを決めずに始める

失敗⑤ ルールを決めずに始める

失敗⑥ やりっぱなし

今回は、失敗④から解説していきます。

うちでもやろう!で始めてしまうと失敗する!

『他社でもやっているから、うちでもやろう!』という社長の号令から直ちに1on1ミーティングを始めると必ず失敗します。

なぜならば、事前に1on1ミーティング「導入のねらい」を明確に決めていないからです。

ねらいを決めないと、上司が途中で混乱したり迷ったりし部下に良い1on1ミーティングができなくなります。

ゴールが見えていないので1on1ミーティングが自然消滅してしまうリスクも高くなります。よくある1on1ミーティングの失敗例です。

1on1ミーティングをやり始めた段階では、上司は、部下から様々な疑問や質問を投げかけられその都度判断し、部下に回答したりアドバイスをしていきます。その時に、判断基準になるのが1on1ミーティング「導入のねらい」です。

例えば、ねらいが「部下の成長」であれば、上司は部下からの質問に答えを教えず部下の回答を引き出そうと努力するでしょう。

ねらいが明確でなければ、上司は部下に答えを教えてしまい部下とのコミュニケーションを楽しむ方向にもっていくリスクもありますし、『そんなことも知らなかったのか?』と上司が部下をマネジメントの一環で叱責するリスクもあります。

そのようなリスクを防ぎ1on1ミーティングに失敗しないためには、社長が1on1ミーティングの「導入のねらい」を明確にすることから始めるべきです。

簡単に思えることですが、これをやらずに1on1ミーティングを導入する社長は意外に多いです。

参考までに、以下に1on1ミーティングの一般的なねらいを示します。

・ 上司と部下のコミュニケーションの改善

・ 上司と部下の相互理解の向上

・ 上司と部下の信頼関係の向上

・ 部下のモチベーションアップ/維持

・ 部下の成長

・ 部下の自立・自走

・ 退職率の低下

・ メンタル休職率の低下

・ 仕事上の課題のタイムリーな解決

・ 部下が抱えている課題や悩みの解決

設定した1on1ミーティング導入のねらいが、自社の重点経営課題の解決になっていないのであれば、再度検討しねらいを変更した方がいいかもしれません。

ねらいで重点経営課題が解決できるのであれば、有効なねらいが設定できたことになります。

ねらいは、欲張らずに1つずつ設定し実現していった方がいいです。

例えば、私どものお客様では初めに「退職率の低下」をねらいに1on1ミーティングを実施し、退職率が低下し効果がでたころに次の目的である「部下の成長」を設定し実践しておられます。

何も決めずに初めてしまうと失敗する!

つぎに、失敗⑤を解説します。

失敗例④と同様に、事前に1on1ミーティングのルールを明確に決めずに1on1ミーティングを導入すると必ず失敗します。

その理由を具体的なルールの事例で解説します。

1つ目は開催頻度です。

開催頻度を決めずに1on1ミーティングを導入すると、1回目は全上司が1on1ミーティングをやりますが、2回目以降は1週間後にやる上司、1カ月後にやる上司、しばらくやらない上司に分かれてしまいます。

上司によってバラバラな開催頻度だと部下は疑問を感じたり困惑してしまいます。

ひどい上司は、部下との1on1ミーティングを週に1回、2週間に1回、1カ月に1回と部下ごとに別々の開催頻度でやってしまいます。

これでは、部下は不公平を感じてしまい、上司に不安や不満に感じモチベーションが下がります。

挙句の果てに1on1ミーティングが自然消滅してしまうリスクもあります。これも、よくある1on1ミーティングの失敗例です。

2つ目は、記録の作成です。

記録の作成ルールを決めないと、1on1ミーティング時に記録を取る上司、取らない上司に分かれます。

記録を取らない上司は、2回目の1on1ミーティングで前回聴いた話を忘れてしまい、同じような質問をし部下から『上司は私に興味・関心がないのかな?』と思われ信頼関係にひびが入ってしまいます。

記録を紙で取るかパソコンに入力するかも、ルールを決めないと上司によってバラバラになってしまいます。

部下からすると、上司によってやり方が別々だと『うちの上司だけパソコンに入力しているが、これは経営陣に共有しているのか?』等のような不安を感じます。

人事部門からすると記録が紙とデータの2つになると管理しにくいです。

全社員向けに「1on1ミーティングの記録は、紙で必ず作成する。ただし、最後の5分間は、上司が必要だと感じた記録をパソコンに入力する」等のようにルールを決めれば、上司・部下も人事部門も困らず運用できます。たかが記録のルールですが、決めておかないと前述した課題がでるので意外と重要ルールになります。

参考までに、事前に決めておいた方がよい7つのルールを以下に示します。

1 開催頻度

1回/週、1回/隔週がお勧めです。

2 実施時間・開始から終了時間の制限

実施時間は30分から1時間がお勧めです。

1on1ミーティングが実施できる時間帯も併せて決めた方がいいです。

例えば朝は8時からしか1on1ミーティングをやってはいけない、夕方は19時まで等のように決めます。

3 具体的な進め方

具体的な1on1ミーティングの進め方も決めます。

最初に体調確認をするかどうか、まとめでアクションプランを作成するかどうか、このあたりが決める時のポイントになります。お勧めの進め方を以下に示します(詳細は、こちら)。

   ① 体調の確認

   ② 前回のアクションプランの進捗状況の共有

   ③ メイン

   ④ まとめ(アクションプランの設定)

4 話の内容

仕事の進捗の話をするかしないか、目標管理の話をするかしないか、このあたりは決めたほうがいいです。

これらの話をする場合は、詰めすぎないように留意する必要があります。

『部下の成長』、『部下のこれからのキャリア』が理想の内容ですが、慣れるまでは『プライベート』や『まわりとの人間関係』の話をするといいでしょう。

5 記録

記録を作成するかどうかは決めた方がいいです。

記録の作成は必須にした方がいいと思います。

前回聴いたことを忘れてしまい、2度同じことを聴いてしまうと部下からの信頼を失う可能性があるからです。

先ほども述べましたが、紙かパソコンかも決めておきます。

6 情報の共有範囲・秘密情報の扱い

1on1ミーティングで知り得た情報の共有範囲は決めた方がいいです。以下に共有範囲例を示します。

・ 当事者だけ

・ 当事者+人事部門 

・ 当事者+上司の上司

・ 当事者+経営陣

なお、部下本人の秘密情報の扱いも決めます。

メンタルに関する話は人事部門には報告させるようにした方が良いと思います。

7 アセスメント(評価)

1on1実施後のアセスメント(評価)をどうするかも決めます。上司の自己評価と部下評価は実施した方がいいです。詳しくは、失敗例⑥をご覧ください。

やるだけで振り返らないと失敗する!

最後に、失敗⑥を解説します。

1on1ミーティング導入後にアセスメント(評価)をやらないと、1on1ミーティングがアップデートされないので、上司に以下に示すような不安や不満が残りモチベーションが下がっていきます。

 ・ 部下の会社に対する質問に答えられない(自分も答えを把握していない)

 ・ 不平・不満ばかり言う部下への対処方法がわからず悩む

 ・ 何を話すべきなのかがわからず不安

 ・ どこまで部下の心の中に踏み込めばいいのか不安

 ・ 早く終わった場合はどうすればいいのか不明

一方、部下には以下のような不安や不満が残ります。

 ・ 上司が最後まで話を聴いてくれないことが多く不満

 ・ 最後は、上司の考えで丸め込まれるので不満

 ・ 上司がルール通りに開催しない・短かく終わるので不満

 ・ 話すことはないが、時間まで話さなくてはならない不安

 ・ 上司のコーチングがあまり役にたたない

 ・ 1on1ミーティングに意味はあるのか不安

以上のような上司と部下の不安や不満を解決せずそのままにしておくと、1on1ミーティングは形骸化し最もやりたくない仕事の1つになってしまいます。

最悪の場合3ヵ月から6ヵ月後に1on1ミーティングが自然消滅していくリスも高くなります。

このような失敗をしないために1on1ミーティング導入後のアセスメント(評価)は必ずやってください。

具体的には、上司のアセスメント(評価)と部下のアセスメント(評価)の両方が必要です。

上司のアセスメント(評価)は、1on1ミーティング実施1回目の後、2回目の後に必ずやります。

1回目は、実施した上での良かった点と前述したような課題を1on1ミーティングを実施した全員の上司で共有し、上記課題の解決策を全員で考え、2回目の1on1ミーティングで解決策を実行します。

2回目は、解決策実行後の効果と課題を共有し解決策のアップデートをします。

新たな課題も発生するので、その解決策も併せて決め、3回目の1on1ミーティングで解決策を実行します。

3回目のアセスメント(評価)の時期は、まだ改良余地がある場合は3回目実施後、そうでない場合は3ヵ月後に開催するといいです。

それ以降は、安定稼働になるので四半期か半期に1回、同様のアセスメント(評価)をやるといいでしょう。

部下のアセスメント(評価)は1on1ミーティングを実施してから3ヵ月から6ヵ月経ってから、社員に1on1ミーティングのアンケートをとり、その結果で1on1ミーティングのアップデートや継続可否を決めることを推奨いたします。

アンケートは無記名で部門名だけ記入することをお勧めします。

具体的なアンケート項目を以下に示します。

・ 1on1ミーティングのねらいの実現度合

・ 上司の良かった点と課題

・ 部下の良かった点と課題

・ 具体的な定量効果や定性効果。

・ 1on1の継続

いかがでしたでしょうか?

最近、注目を浴びている1on1ミーティング。

流行っているからと気軽に始めてしまうと痛い目にあってしまいます。

紹介した1on1ミーティングの失敗例を反面教師にし1on1ミーティングを実施して頂ければ幸いです。