こんにちは、白潟敏朗です。
「1on1ミーティング」の成功ポイントの続きについて解説します。
1on1ミーティングに成功する7つのポイント
「マネジャーにマネジメント力を強化してほしい」、「社員に成長してもらいたい」、「自立・自走できる社員になってもらいたい」等の社長や人事部長の期待に応えられる1on1ミーティングを実践するためには、何をすればいいのか?
その答えは以下の7つのポイントになります。
① 社長による適切な目的の設定と全員への衆知徹底(1on1で経営課題の解決)
② 社長の継続運用への強い意志
③ 経営陣の率先垂範(経営陣から1on1の実施)
④ 遵守すべき基本ポリシーと運用ルールの設定
⑤ まずは小さく成功し、それから大きな成功へ
⑥ 1on1オーソライスプログラム(認定制度)と研修・トレーニング制度の構築と運用
⑦ 定期的なアセスメント(評価)とアップデート
今回は、成功ポイント④から解説していきます。
週1回30分で1on1ミーティングをはじめよう!は失敗する
まずは、以下に示す9つの基本ポリシーを検討し設定します。
1 導入のねらい
1on1ミーティングのねらい設定方法は成功ポイント①をご覧ください。
原則として、1つずつねらいを設定し、ねらいが実現できたら次のねらいを設定します。
2 導入の対象
いきなり全社での導入はリスクが高いです。
小さな成功ができる部門から導入していきます。詳しくは成功ポイント⑤をご覧ください。
3 オーソライズプログラム(認定制度)の設計
1on1ミーティングを実施できる上司の前提条件を決め、前提条件をクリアした上司から1on1ミーティングを実施するような制度を構築・運用します。
詳しくは成功ポイント⑥をご覧ください。
4 研修/トレーニング制度の設計(社内・社外)
1on1ミーティングの認定がとれるようにするための研修/トレーニング制度を構築・運用していきます。
社内で研修できる環境がない場合は外部を活用するといいでしょう。詳しくは成功ポイント⑥をご覧ください。
5 実施する組合せ(誰と誰がやるのか)
1on1は原則として、直属の上司と部下で実施します。ただし、以下の例外対応を決めておく必要があります。
・ 部下が8人以上いる上司 ⇒ 部下7人までが限界なので、2グループに分け1on1ミーティングをします。
・ 直属の上司が前提条件をクリアしていない ⇒ 上司の上司が1on1ミーティングをします。
6 導入時期・導入ステップ
導入時期を決め、小さな成功ができる部門から始め、部門を拡大していく手順で推進していきます。
7 強制/任意
1on1ミーティングを実施するかどうかを曖昧にせず強制でやるのか、やりたい上司だけがやるのかを決めます。
私は強制による1on1ミーティングの実施をお勧めします。強制しないと、やらない上司が増え最後は誰もやらなくなってしまうからです。
最初は強制で無理やりやらせて、やりながら1on1ミーティングの意義を感じてもらい継続させるようにもっていくのがベストな進め方です。
8 人事評価との関連
1on1ミーティングを実施した上司の人事評価をどうするかは決めておいた方がいいです。
加点評価よりも、1on1ミーティングを実施しなかった上司の減点評価をするかどうかがポイントになります。Googleでは1on1ミーティングをやらないと減点評価になるようです。
部下については、人事評価との関連はなくてもいいと思います。
9 ネーミング
オーソドックスな名前は1on1ミーティングですが、そうでなくてもよいです。
名前から1on1がイメージでき、全員がやりたくなりワクワクするような名前を決めます。(例:ForYou、部下のための時間)
つぎに、7つの運用ルールを検討し設定します。
1 開催頻度
1回/週、1回/隔週がお勧めです。
2 実施時間・開始から終了時間の制限
実施時間は30分から1時間がお勧めです。
1on1ミーティングが実施できる時間帯も併せて決めた方がいいです。例えば朝は8時からしか1on1ミーティングをやってはいけない、夕方は19時まで等のように決めます。
3 具体的な進め方
具体的な1on1ミーティングの進め方も決めます。
最初に体調確認をするかどうか、まとめでアクションプランを作成するかどうか、このあたりが決める時のポイントになります。お勧めの進め方を以下に示します。
① 体調・仕事の負荷状況の確認
② 前回のアクションプランの進捗状況の共有
③ メイン
④ まとめ(アクションプランの設定)
4 話の内容
仕事の進捗の話をするかしないか、目標管理の話をするかしないか、このあたりは決めたほうがいいです。
理想は『部下の成長』、『部下のこれからのキャリア』ですが、慣れるまでは『プライベート』や『まわりとの人間関係』の話をするといいでしょう。
5 記録
記録を作成するかどうかは決めた方がいいです。
記録の作成は必須にした方がいいと思います。
前回聴いたことを忘れてしまい、2度同じことを聴いてしまうと部下からの信頼を失う可能性があるからです。
6 情報の共有範囲・秘密情報の扱い
1on1ミーティングで知り得た情報の共有範囲は決めた方がいいです。以下に共有範囲例を示します。
・ 当事者だけ
・ 当事者+人事部門
・ 当事者+上司の上司
・ 当事者+経営陣
なお、部下本人の秘密情報の扱いも決めます。メンタルに関する話は人事部門には報告させるようにした方が良いと思います。
7 アセスメント(評価)
1on1実施後のアセスメント(評価)をどうするかも決めます。
上司の自己評価と部下評価は実施した方がいいです。
詳しくは成功ポイント⑦をご覧ください。
9個のポリシーと7個の運用ルールを事前に決めることで1on1ミーティングの導入は成功します。
いきなり全社導入は危険!
つぎに、成功ポイント⑤を解説します。
いきなり1on1ミーティングを全社で導入するのは危険です。
部下から信頼されてない上司が1on1ミーティングをやると部下のモチベーションが下がったり、部下の話を上司が最後まで聴かないと部下が話をしなくなり1on1ミーティングが有効でなくなる等の結果になってしまうからです。
まずは小さな成功をし、徐々に拡大し大きな成功につなげていくアプローチが有効です。
具体的には、以下の2つの条件をクリアする上司がいる部門から始めます。
・ 部下から信頼されている
・ 部下の話を最後まで聴ける(部下の話をさえぎらない)
その後、上記2つの条件をクリアする上司がいる部門を拡大していきます。
上記2つの条件をクリアしていない上司は、信頼を得るための努力やアクティブリスニング(積極的傾聴)が身につくトレーニングや研修を実施していき、2つの条件をクリアしていきます。
その過程の中で、どうしても部下から信頼を得られない上司は部下をつけない等の対応が必要になります。
1on1ミーティングを実施しながら、以下の力もつけていけるようトレーニングや研修が必要です。
アクティブリスニング力
・ 部下の話を聴いた直後に否定しない
・ 部下の話を最後まで聴くが、その後自分の考えやおもいを押しつけない
質問力(コーチング力)
・ 質問により部下が自分で考えるようになり自分で課題解決できる
部下の育成力・キャリアサポート力
・ 部下が育つ環境整備ができ部下が自分で育っていく。
・ 部下のこれからのキャリアを共に考えキャリアパスの設定ができる。
1on1ミーティングができる上司の認定条件を見える化する!
つぎに、成功ポイント⑥を解説します。
まずは、1on1オーソライスプログラム(認定制度)を構築しましょう。
成功ポイント⑤でも解説しましたが、1on1ミーティングを実施できる上司の前提条件を明確にします。
例えば、部下から信頼されていること等が条件になります。前提条件をクリアしたら、次のステップとステップアップ条件を明確にし1on1ミーティング力を習得してもらいます。標準的なステップを以下に示します。
ステップ0:1on1ミーティングできない → 部下との信頼関係の構築
ステップ1:チャレンジャー → 1on1ミーティングを重ねることで部下との人間関係の構築
部下から信頼されており、個人としての実力もあるので部下から尊敬もされている。
ただし、部下とのコミュニケーションが十分でないので人間関係は構築されていない。
ステップ2:ビギナー → アクティブリスニング研修とトレーニングで傾聴力の習得
部下から信頼・尊敬されており、部下との人間関係も構築できている
ただし、アクティブリスニング力が不足している。
具体的には、部下の話を最後まで聴けない、部下の話を最後まで聴けるが聴いた直後に否定してしまう、部下の話を否定はしないが部下の話を聴いた後に自分のおもいや考えを押しつけてしまう。
ステップ3:ブロンズ → コーチング研修で質問力の習得
1on1ミーティングの認定上司です。
部下からの信頼・尊敬があり、部下との人間関係も構築できている。アクティブリスニング力も申し分ない。
ただし、質問によって部下のおもいや考えを引き出せません。
ステップ4:シルバー → 部下の育成力・キャリアサポート力研修により部下の成長力の習得
1on1ミーティングができ、コーチングにより部下のおもいや考えを引き出すこともできます。
ただし、部下の育成力・キャリアサポート力が不足している。
ステップ5:ゴールド
1on1ミーティングにより部下の自走をサポートできます。パーフェクトな上司です。
1on1ミーティングをやりっぱなしにしない!
最後の、成功ポイント⑦を解説します。
1on1ミーティングは定期的なアセスメント(評価)とアップデートが重要です。まずは、アセスメント(評価)から解説します。
成功ポイント④でも解説しましたが、上司の自己評価と部下評価の2つがポイントです。
上司の自己評価は、1on1ミーティング実施1回目の後、2回目の後に必ずやります。
1回目は、実施した上での良かった点と課題を1on1ミーティングを実施した全員の上司で共有します。
一般的には以下のような課題があがります。
・ 部下に○○と聴かれて困った
・ 部下に話すことがありませんと言われた
・ 5分で1on1ミーティングが終わってしまった
・ 部下が不平・不満ばかり言っている
・ 自分では解決できない相談がきた
上記課題の解決策を全員で考え、次回の1on1ミーティングで実施します。
2回目は、解決策実行後の効果と課題を共有し解決策のアップデートをします。
新たな課題も発生するので、その解決策も併せて決めます。
3回目のアセスメント(評価)の時期は、状況によって早くやるか3ヵ月後に開催するといいです。
それ以降は、安定稼働になるので四半期か半期に1回、同様のアセスメント(評価)をやるといいでしょう。
部下のアセスメント(評価)は1on1ミーティングを実施してから3ヵ月から6ヵ月経ってから、社員に1on1ミーティングのアンケートをとり、その結果で1on1ミーティングのアップデートや継続可否を決めることを推奨いたします。
アンケートは無記名で部門名だけ記入することをお勧めします。具体的なアンケート項目を以下に示します。
・ 1on1ミーティングのねらいの実現度合
・ 上司の良かった点と課題
・ 部下の良かった点と課題
・ 具体的な定量効果や定性効果。
・ 1on1の継続
いかがでしたでしょうか?
最近、注目を浴びている1on1ミーティング。進め方により、良薬にも劇薬にもなります。
今回紹介した1on1ミーティングの成功ポイントを、ぜひ御社の1on1ミーティングの導入の参考にして頂ければ幸いです。