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1on1のはじめ方(セミナーレポート)

2019.07.04

セミナーレポート

1on1株式会社の吉本です。
1on1に特化した会社ということで設立した1on1株式会社ですが、たくさんの会社様からお問い合わせをいただいておりまして、1社1社訪問しているとお待たせしてしまう会社が出るような状況になっています。

そこで、多くの会社様にお伺いしたときにお話ししている、1on1の概要に実践的なノウハウを加え、毎週セミナーという形でお伝えすることにしました。今日はセミナーレポートという形で、その内容の一部をダイジェストでお伝えしたいと思います。

講師は1on1株式会社、代表取締役の白潟敏朗です。

1.1on1ってそもそも何?

白潟総合研究所株式会社及び1on1株式会社の代表をやっています白潟敏朗と申します。わたくし、前職も含め30年近く、コンサルタントという立場から中小企業の経営のお手伝いをさせていただいていますが、経営者とお話しをすればするほど、中小企業の課題の多くは「人」の問題に帰結すると強く感じます。

どんなに仕組みやマーケティングを強化しても、そこで働く社員の皆さんが会社に不満を持っていたり、仕事にやりがいを感じていなければ、会社の経営は絶対に良くなりません。これは1万社以上の会社とお付き合いする中で経験から導き出された確信でもあります。

白潟総研という総合コンサル会社をを立ち上げ、その後、まずは「採用」から「人」の問題の解決をお手伝いしようと、リファラルリクルーティング株式会社をつくりました。そして採用した社員のポテンシャルを最大限に引き出、し離職率を最小限に抑える方法の一つである「1on1」の導入と定着を支援する会社として新しく1on1株式会社を設立しました。

一般的には人事評価面談や目標管理面談も上司と部下が1対1で行えば1on1と呼びます。しかし、わたしたちは効果の出る1on1を次のように定義しているんです。

上司が部下の自走をサポートする1対1ミーティング

「上司が部下の自走をサポートする」というところがミソです。ではわたしたちの言う1on1が人事評価面談や目標管理面、それから上司がちょっと部下を呼んで面談する「ちょっといいミーティング」と何が違うのか比較してみたのがこの図です。

まず最初に人事評価面談。四半期に1回とか半年に1回とかやりますよね。でもこれは評価結果や給与の通知がメインの話題になりますから緊張感が漂う面談になりがちです。これはわたしたちがオススメする1on1とはちょっと違います。次に週1回とか月に1回とか行われる目標管理面談。面談のテーマが目標の設定やチェックですから、部下にとっては詰められるというイメージが拭えない場合が多いです。それから「ちょっといいミーティング」。これもだいたいは厳しいムードで展開することが多く、わたしたちがオススメする1on1とはかなりイメージが異なります。

ではわたしたちがオススメしている1on1はどうなんだろうという話ですが、そもそもの目的が「部下の成長支援・キャリア支援」になります。面談の中で目標の設定やチェックが行われることもありますが、メインの話題ではありません。ですから緊張感が漂ったり、詰められムードで展開することもありません。そういうムードが漂ってるとしたら上司に問題があります。

Google検索しない日は無いというくらいわたしたちの生活に入り込んでいるGoogleが実は1on1を流行らせた張本人なんです。

Googleでは、マネジャーは週1回1時間、必ずメンバーと1対1で個人面談してコ-チングしなければなりません。そして1on1ができないマネジャーは、どんなにチームの成果が上がっていても、評価が下がる仕組みになっています。この評価のルールは全ての部門、全ての国で共通なんだそうです。

週1回1時間ということは、7、8人部下のいる上司は、週のうち丸々1日は1on1だけの日になる計算です。これくらい徹底するわけですから、組織全体のパフォーマンスを高める効果が実証されているんだと思います。

Googleだけでなく全世界の成長企業の多くが導入している1on1、日本でも30%以上の企業がすでに導入しているという調査結果も出ていますが、具体的にどんなメリットがあるんでしょうか?わたしたちがお手伝いしている企業の導入事例も材料に加えて、メリットをまとめてみたいと思います。

①上司と部下のコミュニケーションの改善

1on1がなければ月に1回の目標管理面談でしか会話しなかった上司と部下が、週1回30分から1時間、しかも業務の話だけでなく、プライベートな話まで共有するわけですから、自ずとコミュニケーションの改善が図られます。

②上司と部下の相互理解の向上

1on1においては、上司側の基本的な姿勢は「評価」や「否定」ではなく「傾聴」や「理解」。上司が部下の話に真摯に耳を傾け、理解しようとすればするほど、部下も上司を理解しようとし、相互の理解が進みます。表面的な業務の理解だけではなく、価値観の理解まで進むと、適切なキャリア支援が行えるようになります。

③上司と部下の信頼関係の向上(組織力アップ)

1on1を繰り返す中で上司とそれぞれの部下の相互理解が進めば、結果的に信頼関係が向上し、そのチームのパフォーマンスの大幅な向上が見込めます。

④部下のモチベーションアップ/維持

1on1はアメと鞭のマネジメントではなく、理解と信頼をベースとしたマネジメントですから、部下の業務に対するモチベーションは向上する可能性が高まります。

⑤部下の成長と自立・自走

もしかしたらこれが最大のメリットかもしれません。適切な1on1が行われると、指示や命令することなく、部下は自立・自走し、勝手に成長していきます。
なぜ1on1で自律・自走が促されるかというと、1on1の面談は、部下の間違いを指摘したり正しい方法を伝えたりするのではなく、ひたすら傾聴し、ひたすら質問する面談だからです。具体的な方法については後ほど説明します。

⑥退職率/メンタル休職率の低下

1on1を導入すると、会社や業務に対する不満が小さなうちに解決されますから、確実に退職率やメンタル休職率が下がります。採用という面で大手になかなか太刀打ちできない中小企業にとって、退職率や休職率が下がるというのは大きなメリットです。

⑦仕事上の課題と部下が抱えている課題の解決

1on1は極端に言うと雑談から始まる面談ですが、話を進めていくうちに仕事上の課題や部下本人が抱えている課題が見える化され、その多くは1on1の対話、コーチングの中で解決されてしまいます。

もちろん1on1を導入することによって想定されるデメリットやリスクもゼロではありません。しかし、それらのデメリットやリスクは正しく導入し、正しく運用することでほとんど回避可能です。このあと、1on1を正しくできる上司についてお話ししたいと思います。

 

2.1on1に必要なスキル

1)1on1できる上司のステージ

効果的な1on1を実施するためには上司側が1on1できるスキルを一定以上持っていなければならないのですが、わたしたちは独自のアセスメントで上司側のスキルのレベルを6つのステージという形で判定して、足りないスキルを研修などでサポートするようにしています。その6つのステージが下図です。

一番ヤバいのは左下の「部下から信頼されていない」というステージですね。この状況では、月曜日の1on1に向けて金曜日から部下が憂鬱な状態になり、最悪の場合はそのままメンタルをやられて退職というケースもあります。

次が「チャレンジャー」というステージです。実力もあって部下から尊敬されているが、人間関係はまだできていないという状態です。この状態だと、1on1で上司が「何か話すことある?」と聞いても、部下が「いやー、特にありません」で終わってしまうような展開が予想されます。このステージの方は、部下との人間関係を構築するというチャレンジをしながら、「特に話すことはありません」と言われたときにどのように返していくかということを訓練する必要があります。

その次が「ビギナー」というステージ。この上司は部下との人間関係はできているけど、部下の話を最後まで聴けないとか最後まで聴いても否定してしまう、否定派しないけど自分の考えを押しつけるなど、コミュニケーションに改善の余地があるステージです。ビギナーの方も適切なトレーニングを受けることによって次のステージへ進むことが可能です。

ここから先はようやく1on1ができる上司ということになりますが、まずブロンズはビギナーではまだ課題だったコミュニケーションの面が改善されていますので、相互の信頼関係は高まり、結果的に仕事だけではなく仕事以外の悩みや課題の解決が1on1の中でできるようになってきます。1on1の中でモチベーションも上がりますので、ブロンズステージ以上の上司の部下の離職率は非常に低いです。

さらに質問によって部下のおもいや考えを引き出せる、一般的にはコーチングと言いますが、この質問の能力を備えた上司が1on1をやると、部下が成長していきます。

そしてゴールドステージになると、部下の成長だけではなく、会社のビジョンや事業計画と紐付けて部下のキャリアサポートまでできるようになります。こうなると部下の自立や自走を促せるように成り、優秀な部下が辞めなくなります。

ある統計によると退職理由の50%以上が「上司がイヤだから」というものだそうです。ですから1on1できる上司を増やすことによって離職率が大幅に改善します。なので1on1を離職率を下げるために導入する企業も多いです。

 

2)基本的なスキル

わたしたちもたくさんの会社さんの1on1の導入や運用の支援をしてきましたが、うまく機能するかどうかは、上司の側のスキルのレベルによるところが大きいです。そのスキルのレベルが、先ほど紹介しました「1on1できる上司のステージ」ですが、自分がどれくらいのステージにいるのかまずわからなければ改善のしようがありませんよね。そこで上司がどれくらいのレベルなのかを判断するために、わたしたちが実際に使っているチェックシートを紹介します。

理想はもちろん全ての項目に○が付くことですが、もし○が付かない項目があれば、1on1を実施する際に意識していただければと思います。

 

3)アクティブリスニング(積極的傾聴)スキル

1on1を効果的に行うための専門的なスキルは大きく分けるとアクティブリスニング(積極的傾聴)スキルとコーチングスキルになります。

アクティブリスニングを説明するときによく使われるのが「聞く」と「聴く」の違いです。もちろん「聴く」の方がアクティブリスニングです。「聞く」の方は「音声だけを聞く」というイメージ、「聴く」の方は漢字に「目と心」が含まれているので文字通り、耳だけではなく目と心も使って聴く、つまり五感を使って100%集中して聴くというイメージです。1on1で使う「きく」はもちろん「聴く」の方ですよね。

アクティブリスニングの効果は3つあります。1つ目は「部下の要望・悩み・考えが把握できる」ということ。思い込みや誤解することがなくなるので、非常にマネジメントがやりやすくなります。2つ目は「部下が喜ぶ・満足する・嬉しくなる」ということ。30分以上皆さんが1on1で部下の話を聴いたら部下は非常に喜びます。60分も聴いたらヤバいですよね。そうすると3番目の効果「部下に好かれる・信頼される」が出てきます。最初は部下の話を聴いているうちに、ツッコミを入れたくなったり反論したくなることもあるかもしれません。しかし、1回目、2回目の1on1でしっかり聴くということをやることによって、その後の1on1の効果が劇的に変わってきます。

わたしたちは、アクティブリスニングのスキルをベーシックスキル(5つ)とプロフェッショナルスキル(6つ)に分けています。

アクティブリスニングのベーシックスキル
  1. 部下の方を向く
  2. 部下の目を見る
  3. うなずき
  4. 相づち
  5. メモを取る
アクティブリスニングのプロフェッショナルスキル
  1. リフレイン
  2. 沈黙
  3. 部下が話しやすい雰囲気をつくる
  4. 部下の話を最後まで聴く
  5. 部下の話を聴いた直後に否定しない
  6. 部下の話を聴いた後に、自分の考えを押しつけない

 

4)コーチング(質問力)スキル

コーチングの定義もいろいろありますが、広辞苑の定義「本人が自ら考え行動する能力を、コーチが対話を通して引き出す指導術」が非常にわかりやすいです。

ご存じの方も多いかもしれませんが、コーチングの前提となっている考え方は以下になります。

①人間は、誰でも無限の可能性を持っている
②その人が必要とする答えは、その人の中にある
③その答えを見つけるためには、コーチが必要である

ですので、コーチングのベーシックスキルはたった一つ、
「部下に答えを絶対教えない!」
です。これがコーチングの基本です。日常的に部下から質問されると思いますが、みなさんはどのように答えていますか?たとえば、
「○○マネージャー、どうすれば仕事の効率があがるでしょうか?」
と質問されたらどうでしょうか?次の図のどちらでしょうか?

先ほどコーチングのベーシックスキルはたった一つ「部下に答えを絶対教えない!」だとお伝えしましたが、答を教えることを3ヶ月続けると部下は思考停止病になります。部下は成長して自走するどころか、考えることを放棄してしまうのです。基本は「○○さんはどう思うの?」です。

コーチングのベーシックスキルは「部下に絶対に答えを教えない!」でしたが、プロフェッショナルスキルは下図の通り6つあります。

それぞれの詳しい説明はわたしたちがやっている面談セミナーでお伝えしていますが、オレンジ色の項目だけ簡単に説明しますね。

まず②ですが、みなさん部下にとってわかりやすい質問をしていますか?たとえば「部下が知らない難しい言葉は使わない」「一つずつ整理して質問する」「質問は抽象的ではなく具体的に」などです。

次に③ですが、オープンクエスチョンとは「○○さん、どう思うの?」とか「○○さん、どうしたいの?」など5W1Hを聞く質問で、YESかNOかを聞くのがクローズドクエスチョンです。「○○さん、どうしたらうまくいくかな?」というオープンクエスチョンに対する答えの後に「それ、すごくいいアイデアだね。で、それホントに明日からできる?」というクローズドクエスチョンを組み合わせると、部下が具体的に考えるので非常に有効です。

④の「枕詞の活用」とは、ちょっと部下にとってイヤな話をする前に、例えば「○○さんに耳の痛い質問をするんだけどいいかな…」とか「もしかしたらちょっとムカつくかもしれないけど…」など、部下が心の準備ができるようワンクッションの枕詞を入れるということです。

⑤のチャンクダウンですが、チャンクはかたまりのことなので、チャンクダウンとは「かたまりをほぐすこと」。たとえば部下に「昨日の提案どうだった?」と聞くと「バッチリでした!」みたいなザックリした答えが返ってきがちです。これを「バッチリいったって、具体的には?」という質問でほぐしていくのです。チャンクダウンすることによって、うまくいった原因や、逆にうまくいかなかった原因も明確になるので、具体的に褒めたり具体的な問題解決が可能になったりするのです。

 

吉本です。
実際のセミナーではこの後、実際の面談の進め方についてお伝えしました。「何から話せばいいのか?」「テーマ設定はどうしたらよいのか?」「特に話が無いと言われたときにどう返すのか?」などなど実際に導入するときに疑問に思うことを中心にお話ししました。

このレポートでは、割愛させていただきますが、ここまで読んで、興味があるという方は是非この『1on1 面談の進め方』セミナーや『1on1 面談の進め方』セミナーにご参加下さい。詳細はこちらになります。

また、都合が合わなくてセミナーに参加できないという方は資料をお送りすることも可能ですので、こちらから担当までお問い合わせ下さい。