「1on1ミーティング」って知っていますか?
昨今、中小ベンチャー企業で注目を集めているマネジメント手法があります。それが、「1on1ミーティング」という方法です。
ベストセラーの書籍も出版され、ヤフーやクックパッドなどの多くの企業がこぞって導入しています。
2017年10月4日~31日の期間、企業の人事部を対象に実施した「1on1ミーティングに関するアンケート」(回答数:190件、ビジネスコーチ株式会社(所在地:東京都千代田区、代表取締役:細川馨)調べ)によると、83.2%の企業が1on1を「すでに導入している」あるいは、「前向きに検討している」、「導入することに興味がある」、という回答をしています。
なぜ、これほどまでに多くの企業の注目を浴びているのでしょうか?
それは、この最新の手法によって多くの企業が長年抱えている「コミュニケーション」という課題に対して効果を発揮しているからです。
しかしながら、導入の仕方に失敗しては、せっかくの最新の手法も効果を発揮してくれません。
今回は、「1on1ミーティング」というマネジメント手法についてその効果を最大化するためにどうすればいいのでしょうか?
「1on1ミーティングとは?」、「1on1ミーティングを導入する目的とその効果は?」、「失敗しがちな1on1ミーティングとは?」、「1on1ミーティングがうまくいくポイント」という4つの観点で見ることが重要です。
それぞれの観点について、1000社以上の中小ベンチャー企業で組織改革の支援をしてきたコンサルタントであり、実際に事業会社で実践して成果を出した吉本が、専門的な知見と現場での実践知を基に最新のマネジメント手法である「1on1ミーティング」について解説します。
1on1ミーティングとは?
1on1ミーティングとは何かを説明できますか?
1on1ミーティングには、「こうしなくてはならない」という明確な定義がありません。しかしながら、以下の2つの特徴だけは、多くの企業が実施している中で、押さえるべきポイントとして認識されていそうです。
―1on1ミーティングの特徴として押さえるべき2つのポイント
① 上司と部下が定期的に行うミーティングであること。
「1on1」とは、上司と部下が1対1で定期的に行うミーティングのことです。
米国シリコンバレーが、発祥地であると言われ、すでに文化として根付いています。人材育成・マネジメントの手法として、世界的に注目を集めています。
② 上司と部下が自然体で話せる場であること。
部下は上司に仕事で経験したことや悩みなどを伝えて自身の行動の振り返りを行います。
それに対し、上司は部下が成長するようにアドバイスを与え、気づきが得られるように促します。会議や面談などのかしこまった場とは異なり、お互いに自然体で話す場であるということが特徴です。
多くの企業が1on1ミーティングを導入する目的とその効果は?
なぜ、多くの企業がマネジメント手法として1on1を導入するのでしょう?
「職場におけるコミュニケーションの改善」がその最大の効果です。
上述のアンケートによれば、実に78.8%の企業が期待する効果として回答しており、確かに適切な1on1ミーティングを実施できれば、この効果を得ることができます。
多くの中小ベンチャー企業の組織形態は、「フラット型」と呼ばれる形態になりつつあります。管理職がこれまで以上にプレイヤーとしての活躍も求められ、いわゆる「プレイングマネージャー」が管理職層の大半を占めるようになりました。
その結果、「目の前の業務遂行に忙しくて時間がない」という状態になりました。
マネジメントを放棄しているわけではなく、管理職は部下と接する時間を失ってしまったのです。
さらに「働き方改革」に起因する残業時間の削減命令や生まれ育文化背景の違いから「飲みニケーション」ということもなくなり、あまりに強行すれば「パワハラ」と呼ばれ、社内だけではなく、社外にも影響を与えかねない問題となってしまいます。
かつては、当たり前のようにどこの会社でも行われていた「飲みニケ-ション」でしたが、2000年代初頭には、時代遅れと言われ、徐々にその影は薄れていくようになりました。
このような背景から上司が部下とざっくばらんに話す機会が現代の会社を取り巻く環境なのです。
そのような背景を持って導入される1on1ミーティングですが、1on1ミーティングによる「コミュニケーションの改善」を目的として実施されます。
「コミュニケーションの改善」以外にも主に以下の4つの効果があります。
―1on1の4つの効果
① 部下の成長を促進することができる。
② 部下の離職を未然に防ぐことができる。(定着率の向上)
③ 部下の業務進捗状況を把握して、上司がタイミング良く働きかけることができる。
④ 部下の志望に合わせた適材適所の配置と業務の効率化を実現できる。
失敗しがちな1on1ミーティングとは?
多くの企業が1on1ミーティングを導入していますが、その反面、なぜかそれほど効果を得られているという話はあまり聞きません。
なぜでしょうか?
簡単に言うと、後ほどご紹介するポイントをきちんと踏まえていないことが原因なのです。
ここからは、私が実際に見聞きした事例から1on1に失敗してしまっている4つのパターンをご紹介しますので、ぜひ、何が原因なのかを考えてみてください。
失敗パターン①:時間がない!
ある会社のマネージャーは眉を吊り上げながら言います。
「1on1をやるって決まったのは良いんだけど、部下とのミーティングの時間が取れないんだよね~」
プレイングマネージャーにとって、目の前の業務遂行と成果の創出が第一優先で部下育成がどうしても第二優先事項になってしまうのは、よくあることです。
なかなかプレイングマネージャーにとって1on1の時間を捻出することは困難なようです。
失敗パターン②:何を話していいのかわからない!
また、違う会社のシニアマネージャー(部長職)は苦笑いしながら言います。
「1on1やっても、年代が違いすぎるせいか、何を話していいのかわからなくて、よく沈黙の時間が流れるよ~。そうなると、苦痛だねぇ」
同じ会社の別のマネージャー(課長職)はカラ笑いをしながら、こう言います。
「結局、いつも休日の過ごし方とか、この前一緒に行った食事処が美味しかった~とか店員の態度が○○だった~とか、そういう雑談だけに終始しちゃうんですよねぇ」
1on1を実施しても話す話題がなかったり、雑談だけで終わってしまったりするケースも多いようです。
失敗パターン③:指示待ちだけで、会話にならない!
管理職の方からこんな話を聞く機会も多いです。
「業務のことが話題になることが多いから、業務のやり方とか過去の経験談をもとにを丁寧にアドバイスしても、いつも生返事でこっちの話を聞いてるのか聞いてないのか、わからないんだよなぁ」
「業務を行った背景や理由を知りたくて、なんでって聞いているのにぜんぜん応えてくれない。せっかくの成長の機会なのに部下が話してくれないから、全然アドバイスができない」
共通にしている話題はあるものの、なぜか会話が、部下から話が全く出てこなかったりすることが多いようです。結果、上司が一方的に話して終わってしまうなんてことも・・・
失敗パターン④:会社に対する愚痴ばかりで全然進展がない!
一部の管理職の方には、別の悩みがあるようです。
「部下が率直に話をしてくれて非常にありがたいんだけど、会社や経営陣に対する不満ばかり。聞いているこっちの気持ちが滅入っちゃいます」
「部下が愚痴を言う理由もわかりますし、納得もできるんです。でも、それを経営陣に伝えるわけにもいかないし、結果として『その気持ちわかるよ~』ってその場はお茶を濁しちゃってますね・・・」
部下からの話が、不平・不満だらけで余計なストレスが掛かってしまったり、体の良い言い訳やその場限りの口約束や取り繕いに対して、悩みを抱えていたりする方もいらっしゃるようです。
1on1ミーティングがうまくいくポイント
では、1on1ミーティングがうまくいくためにはどうすればいいのでしょうか?
1on1ミーティングを成功させるためには、以下にご紹介する5つのポイントをきちんと踏まえることが重要なのです。
いくつものクライアント様が離職者0で、しかも複数人の昇格者を出すという実績を出したポイントですので、ぜひ参考にしてください。
1つ目は、『信頼関係』をきちんと築くということ。
1on1をすることが、部下にとっても上司にとっても絶好の成長機会であるという共通認識を前提に持つことが重要になります。
その上で、言いたいことが言える信頼関係を築かなくてはダメです。
2つ目は、管理職として『相応しい実力があると尊敬してもらう』こと。
信頼関係の延長かもしれませんが、やっぱり実力が伴わない人に悩みを聞いてもらおうとか相談しようとか思わないです。
多くの場合、上司の方は、実績を出して管理職になられているでしょうから大丈夫かと思います。
中途入社の場合は、より部下にもわかりやすいように自分がどんな業務をしているのか、どういう成果を上げているのかを定期的に伝えることが重要です。
3つ目は、『人間関係』を構築することです。
だから、部下との『約束』や『決め事』なんかは、はっきり言って、自分の上司とした『約束』や『決め事』よりも優先しているぐらいです。
私にとっては、1on1のための時間を確保するというのも、大切な『約束』の1つです。場合によっては、自分の弱点を部下にさらすことだってあります。
4つ目は、部下の話をじっくり聞くということですね。
ついつい部下の意見がこちらの意図通りでないと指摘したくなるのですが、そこはただただ黙っていることが重要なのです
最初は、自分から話してくれない部下も何人かいましたが、まずは、話してくれるまでこちらはずっと黙っている。それが重要なのです。
5つ目は、ちゃんと部下の話を聞き出そうとすることです。
アドバイスらしいアドバイスは、ほとんど必要なくて、それよりもどういう質問をしようかばかり考えることです。
よく『傾聴』なんて言われますが、本当の意味で『聴く』って大切なことなのです。
上記の5つのポイントしっかりと守るために具体的な進め方としては、以下のように面談を進めます。
①アジェンダを用意し、何についてミーティングをするのかを明確にする。
(内容は、仕事の内容以外にもプライベートな内容も含めているとなお良い)
②部下が何に悩んでいるのかを聴きながら、質問で深堀をしたり、気づきを得てもらったりする。
(上司から一方的に話したり、否定したり、答えを言ったりしない)
③部下と最後に次のミーティングまでのアクションプランを具体的に考える。
(アクションプランも部下から自発的に設定してもらうことが良い)
それぞれの詳細については、今後、コラムにて紹介していきます。
いかがだったでしょうか?
コミュニケーションの改善という目的で注目を浴びている1on1。
ぜひ、御社のマネジメント手法に取り入れてみてはいかがでしょうか?